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インフルエンザ予防接種

 今年も11月よりインフルエンザワクチンの接種を開始します。十分量のワクチンを用意しておりますが、例年12月第一週には終了いたしますので、接種を希望される方はなるべく11月中に済ませるようにご案内します。

 当クリニックで行うインフルエンザワクチン任意接種は13歳以上の方々を対象とします。小児は近隣の小児科にご依頼ください。

 ワクチン接種の予約は一切受け付けておりませんのでご了承ください。
 また11月1日は午後を休診させて頂きますので、ご注意ください。

 インフルエンザワクチンに関しては色々と説があり、特にその不用説というものが根強く支持されています。真相を知っているのは賢いごく一部の人達で、大多数は愚民であるとのような語られ方をすると、つい真に受けてしまいそうになりますが、どうなんでしょうね。今回は私が考えるインフルエンザワクチンに関するエッセイを載せておきます。

 インターネットの世界ではインフルエンザワクチン不要論が根強く主張されており、その最大の根拠としてインフルエンザワクチンの有効性が低いことが挙げられています。インフルエンザワクチンの有効性を吟味した論文はたくさんあって、それらをまとめた報告を見る限り、有効性は概ね50~75%と考えるのが妥当だと思われます。ただしここで注意すべきは「有効性」の定義です。有効性50%とは、ワクチンを接種した群と接種しなかった群におけるインフルエンザ発症者の比較において、接種群で発症者を半分に抑えることが出来たということを意味します。たとえばボランティア200人を募り、100人ずつ2グループに分け、片方にはワクチンを接種して、他方には接種をしないとします。この2グループでインフルエンザに罹る人数を比較するわけです。未接種群で50人が発症し、接種群では25人が発症したとすると、有効性は(50-25)/50×100=50%ということになるわけです。つまり有効性50%とは、接種により発症者を半減できたことを意味するのであって、100人接種したら50人がインフルエンザに罹らないということではないということに注意が必要です。風疹ワクチンの有効性が90%を超えていることと比べると、はっきり言ってインフルエンザワクチン接種を受けたとしても、結構な数の人がやっぱりインフルエンザに罹ってしまうということです。それならばワクチン接種は不要でしょうか。いえいえ、決してそのような結論にはならないのです。たとえばあなたが今乗客100人の飛行機中に居るとします。インフルエンザが流行っている時期で、仮に50人が感染しているとしましょう。2人に1人が感染者です。これでは空港に着くまでの数時間できっとあなたも感染するでしょう。だって両隣が感染者と考えて良い状況ですものね。でももし乗客100人のうち感染者が15人だったらどうでしょうか。運がよければあなたの両隣には感染者が居ないかもしれない。マスクをしっかりしていれば感染しないかもしれませんね。先に倣って計算して見ましょうか。感染者50人が15人に減るのですから、(50-15)/50×100=70%です。この程度のパワーはインフルエンザワクチンにあると考えてよさそうです。このようにインフルエンザワクチンの有効性は個人で考えるのではなく、集団への効果という視点で考えることが大切なのです。
 インフルエンザは多くの場合何もしなくても自然治癒します。特にあなたが健康な若者、青壮年者であれば、数日休養するだけで恐らく大丈夫です。しかし子供たちと虚弱、病弱な高齢者にとっては脅威です。毎年1万人以上がインフルエンザに続発する肺炎、脳症などの合併症で命を落としているのです。健康なあなたがインフルエンザに罹ることに実は大して興味はありません(ごめんなさいね)。ただしあなたが電車で隣の席に座るおじいちゃんや子供に感染させることを大変危惧するのです。だってあなたは以前このコラムにも書いたとおり、風邪程度では決して仕事を休まない人だから。でも救いもあります。自分さえ良ければ他人はどうなっても良いと思う人ばかりの世の中は困りものですが、インフルエンザワクチンに関してのみ言えば、利己的な考えもあながち捨てたものではないのかもしれません。多くの人がワクチンを、自分がインフルエンザに罹って不愉快な思いをしないために安くない費用をかけて受けています。あくまでも自分のためにと思ってね。これが他人のためにとなれば、接種希望者は激減してしまうことでしょう。そう考えると今、あなたがたとえ自分だけのためにと思ってワクチン接種を受けたとしても、実はそれがあなた以外の健康弱者を利する結果に繋がるということは大いなる福音です。動機はどうであっても、行動の結果が社会のために役立つのであれば、それは善行と考えるべきだとわたしは常々思っています。
 少しブラックな感じのエッセイになってしまいました。毎年この時期になるとインフルエンザワクチンを受ける、いや受けないでもめるケースが散見されます。多くの場合その効果がどうのとか副反応が心配であるとか費用が高いとか、結局は自分の利害だけに終始した議論になります。仕方がないことだとわたしもわかっています。だって多くの人にとっては自分が最も大切ですものね。でも世の中、自分ひとりでは生きていけませんし、健康なあなたもいずれは年老いて病気を抱えます。いずれは行く道です。その道が多少なりとも安楽であればと願うからこそ、今目の前に居る他人のことも考えられる自分でありたいとわたしは常におもうのです。
 実のところインフルエンザワクチンはあなたのためではなく、この社会にあなたと共存する、あなたよりもずっと弱いお年寄りや子供たちのためにこそ受けて欲しいものなのです。あなたが年老いて弱ったとき、周りに居る若い元気な人達が積極的にワクチン接種を受けてくれるか否か、どちらがあなたにとって好ましい将来か想像してみてくださいね。