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「フード左翼とフード右翼」

 一昨日からの雪にはびっくりしました。春のお彼岸にこれほど降るとは、正直予想だにしませんでした。まあ毎年仙台は3月中旬にベタベタの大雪が降って春を迎えるのが常ですので、今年も恐らくこれで雪はお終いでしょう。たぶん。そう願いたい。

 先日新聞に挟まれてきたファストフード店の広告チラシに目を見張りました。そこにはハンバーグパティが5枚もはさまったハンバーガーの写真、何と500円だそうです。どうやって食べるのかしら?と思いながら、でもきっと子供たちがこぞって食べるんだろうなあと暗澹たる気持ちになりました。恐らく千数百カロリーは下らんでしょう。ポテトとコーラでも付けようものなら、一食で2000kcalは行くのではないでしょうか。そして500円という安さ!野菜中心の定食などに比べると、明らかにコストパフォーマンスが良さそうです。人気があるわけです。どうも最近このようなメガフード(メガマックやメガ牛丼など)、あるいはフードバトルと称される大食い合戦、そしてB級グルメと言われる、所謂「粉もの」食文化が人気を博している一方で、かたやオーガニック、有機野菜、マクロビアン、ベジタリアンやビーガンなど、おおざっぱに言うと自然志向の人たちとの間に二極化が進んでいるように思っていました。そんな折に目にした速水健朗著、「フード左翼とフード右翼」(朝日新書)がとても面白かったのでご紹介します。是非読んでみてください。以下は簡単な感想文です。

 左側にはおなじみのベジタリアンやビーガンが、右側にはB級グルメ愛好者や「ラーメン二郎」をこよなく愛するジロリアンがいる。左側に居る人達はどちらかというと高学歴で収入もそれなりのアッパーミドル層、ホワイトカラーが多く、右側に居るのはフリーターや肉体労働者といった低所得層、ブルーカラーが多いというのは判りやすい分析だ。
 個人的には時々無性に牛丼やラーメンが恋しくなるものの、基本的には野菜中心の食生活だから、まあ左よりの中道だろうか。一方仕事上糖尿病患者さん達を多く診るので、どちらかと言えば右から左への転向を勧める立場にある。しかし左が無条件に良い訳ではもちろんなく、最左翼には徹底しているというか極端な人達が居ることも知っておかなければならない。
 原発事故の影響もあって昨今は食の安全への懸念がひろがり、特に子育て中の母親たちが左へ傾倒していくケースが多い。完全無農薬で有機栽培した野菜、自然農法で育てられた鶏や卵などを宅配で取り寄せ、地元のスーパーでは一切買い物をしない。必然として食費がかさみ、理解できない夫との間に深刻な溝が出来て破綻に至るという、所謂「放射能離婚」も食の左傾化と関連が深い。これら左に傾倒している人達が熱心に読みふける雑誌には、「気の流れ」だったり「ヨガ」だったり、あるいは「ヒーリング」や「ホリスティック医療」などの言葉が躍る。某有名医師の連載もあり、遺伝子組み換え食品はもとより、一切の食品添加物、果ては砂糖も猛毒であるから摂取すべきでないとする主張がなされている。この傾向はさらにエスカレートし、最近では複数の医師が薬も不要、ワクチン有害説果ては医療不要説まで展開する事態に陥っている。
 食の好みは様々。好き嫌いに関しては理論的な説明は無理で、感情論にしかならないが、やはり極端はいけないと思う。志を一にした左派が集まって人里離れた所で集団生活を始め、完全無農薬で有機栽培を行い、自給自足に近い生活を送る。その内徐々に活動が先鋭化し、一部の極左過激分子がカルト化してテロリズムに至るというストーリーは既に我々が経験済みのことである。かつての某教団がそうであったように、大学教師や医師がたくさん関与していたことを思えば、知識層における食の極左化はとても怖いことではなかろうか。そんな読後感を得た一冊である。