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オリンピックの効用

 連日展開されるオリンピック競技の熱戦をテレビで観戦しつつ、色々なことを考えた。
 小学生の頃、体育の授業がとても苦手で苦痛であった。まず鉄棒の逆上がりで躓いた。前回りは何とか出来るものの、逆上がりはとてつもなく高いハードルにおもえた。明日の体育で鉄棒があるときは落ち込んでしまい、自室に籠って沈鬱な夜を過ごすこともおおかった。見かねた父が日曜日を利用して、近所の公園の鉄棒で特訓に付き合ってくれた。まず持ち手を逆手から順手に変えるように言われ、その後懸垂の練習からさせられた。それまでのぼくは逆手で鉄棒を持ち、数歩助走して蹴上がる印象で頑張っていたのだが、とんと上手く行かない。そうではなくて、順手でまず懸垂して鉄棒を胸元に引き付けることが第一歩であることを学んだ後は、腹筋を使って下半身を持ちあげられるようになるまでそれほど時間はかからなかった。中学では倒立に苦しんだが、これまた父の指導を受け、自宅の敷布団が破れるまで練習して克服した。要するに腕の筋力が足りないということに子供ながらも程なく気が付き、エキスパンダーで筋トレしようとおもいたったが、当然長続きはしなかった。そういえば当時「ブルワーカー」というトレーニング用品の宣伝が漫画雑誌等に良く載っていて、あれを使ってムキムキになれば自分も女の子にモテるようになるかなあと夢想したこともあった。ブルワーカー、果たして今でもあるのかしら。
 先日観戦した体操競技では、登場する各選手たちの上半身、特に上腕二頭筋などの顕著な発達に目を見張った。もちろん大胸筋も分厚くて、いわゆる逆三角形の体型だ。吊り輪の十字懸垂や倒立を難なくこなすことを考えれば当然の結果かと納得。この体形は水泳選手にも観られるが、二の腕の太さはやはり体操選手が白眉だ。一方で重量挙げ選手では下半身の発達が顕著で、大腿部など痩せた女性のウェストくらいはありそうだ。この体形はスピードスケート、自転車競技、ラグビーの選手に多い。そして先日観た陸上競技長距離走選手の腕は針金のように細い。長い距離を効率よく走るためには当然ながら体重が軽い方が有利で、そのためには上腕の筋肉や大胸筋などはなるべく発達させない方が良いのだろう。
 我々の身体を構成する筋肉にどのようなものがあって、それらをどういう風に動かせばどんな動作が出来るのか、一流選手たちの試合を観戦すると自然におぼろげながらもわかってくる。この体験を是非子供たちにも味わわせてあげたいとおもう。今回のオリンピックには学校連携観戦プログラム枠があり、小中高生たちに各種競技を生で観戦してもらい彼らの興味を喚起する狙いがあった。コロナ禍で残念ながら基本無観客開催となり、この枠による観戦を中止する自治体もおおいと聞く。体育の基本は達人の動きを見て、その真似をすることにあるとおもう。その観点から考えると、日本人選手の金メダルラッシュに沸く今回の東京オリンピックは絶好の体育授業現場であった。残念極まりない。
 高校時代、夏の体育授業は水泳一色で、その試験は個人メドレーだった。四泳法の内バタフライが出来ないものだから、個人メドレーは辛い想い出しかない。当時仙台第二高等学校のプールは戦後米国の進駐軍が川内キャンプ内に作った当時としては珍しい50メートルプールで、一部の水深は200センチを超えるものだった。途中で水を飲んで苦しくなり、プール中央で立とうにも背が立たない。パニックになって手足をばたつかせ、体力を消耗し、最後のクロールに至る時は疲労困憊だったことをおもい出す。きちんと見本となるバタフライを観たことがなかった、いや見ようとしなかったことが敗因だとおもう。
 あと数年すれば還暦を迎える小生、そろそろマラソンも股関節や膝への負担が気になるようになってきたので、次の目標は水泳の個人メドレーを奇麗に泳ぎ切ることにしようかと最近考えている。我流ではダメなので、きちんと教室に通って習うつもり。その際には、ぜひ大橋悠依選手のような若い女性コーチに師事したいとおもっている。