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健康食品にご注意

 早くも5月下旬を迎えます。今年は全国的に入梅が早く、これから雨の季節を迎えるとおもうと、少し憂鬱な気分になりますね。
 しかしながら、日本は四季がはっきりとしていることが大きな魅力の一つです。雨の季節も楽しめることを探して過ごしたいものです。

 さて今回はとある紙面に依頼されたエッセイを先行掲載します。

 ある女性患者さんの血液検査で、急に尿酸が異常高値を示したことがありました。高尿酸血症は文字通り血液中の尿酸が持続的に高値を示すもので、時に急性関節炎(痛風発作)を起します。最近の研究では高尿酸血症が痛風発作以外にも、皆さんご存知のメタボや尿路結石、腎障害や脳心血管疾患などの危険因子となることがわかってきました。高尿酸血症の原因として比較的多いものは、お酒や肉類などの動物性たんぱく質に含まれるプリン体という物質の過剰摂取ですが、この女性にお聞きしても特に思い当たることがありません。まあ、次回まで様子を観ましょうとお茶を濁したのですが、翌月の検査でもまた高値を示します。もう一度詳細に生活歴を訊きなおしましたら、しばらく前からある健康食品を摂取していることがわかりました。この女性が摂取していたのは「スピルリナ」でした。スピルリナというのは藍藻(らんそう)と呼ばれる、藻の一種です。たんぱく質の他、各種ビタミン、ミネラルを含むとされ、総合栄養食としての人気が高いようです。その効能として謳われているものを調べてみると、血圧低下、コレステロール値改善、血糖値改善、花粉症の改善、更には抗ウイルス効果と抗がん作用まで記載がありました。なるほど、糖尿病や脂質異常に悩むちょっとメタボ気味の人にとってはたいへん魅力的に映る健康食品ですね。ところがこのスピルリナに、実はプリン体がたいへん多く含まれているのでした。痛風発作を起こさない、無症候性(無症状)の高尿酸血症を呈する人は全国になんと1000万人も居るとされ、これらの人たちが健康に良かれとおもってスピルリナを摂取すると、更に尿酸が高くなってしまうという皮肉な結果になるのです。スピルリナの他にもクロレラ、ビール酵母やローヤルゼリーなどよく聞く健康食品にプリン体が多く含まれるものがあります。少なくない人たちが健康維持のためとおもって入手、摂取する健康食品ですが、「食品」という言葉に決して安心してはならず、その摂取には十分注意が必要ということですね。
 紙幅に余裕があるので、代表的な健康食品とその被害について書き加えておきましょう。皆さんよくご存じのクロレラでは顔や手の皮膚炎が、ウコンでは肝障害が、アロエでは腸閉塞、朝鮮人参では血圧上昇、そしてダイエットを謳う中国製のお茶(雪茶)では肝障害が今までに報告されています。その他にも健康食品に含まれる様々な成分が、種々の医薬品と相互作用(効果を増強したり、逆に減弱する)を持つことがわかっており、病院から処方されたお薬を常用している方が健康食品を利用する際には特に細心の注意が必要です。また、健康食品の購入に際してもトラブルが多いと聞きます。ネット上によく観られる、「初回はなんと500円!」などの誘い文句におもわずクリックしてしまい、あとからよく見ると定期購入の契約を結ばされていたというパターンはよくあるようです。以前、ある患者さんから相談を受けたケースでは、購入したサプリメントを服用したら嘔吐下痢があり、定期購入を止めようと業者に連絡したところ、因果関係を証明する医師の診断書がなければキャンセルできないと言われたということがありました。この類いの相談は、国民生活センターなどにたくさん寄せられているのが現状です。
 現代の日本において、我々がごく普通の食生活を送っている限り、不足しがちな栄養素は食物繊維とカルシウムくらいでしょう。それ以外のものは概ね充足しており、敢えて安くないお金を払ってまで健康食品に手を出す必要は全くありません。また、広告に謳われている効能効果がもしも本当であれば、必ずや医薬品として国に認められているはずです。その健康食品を摂取した結果、たとえば劇的に血糖値が下がった人、もちろん何人かは居るでしょう。広告はその人たちの体験談を大々的にセンセーショナルに載せます。でも、その背景には摂取しても全く効果がなかった、あるいは予期せぬ被害を被った人が数多くいるかもしれないのです。当たり前ですが、広告は摂取しても全く効果のなかった人や具合が悪くなった人たちの声は絶対に載せません。  
 この小文を読んだ皆さんが、ネット上に踊る様々な健康食品の誘惑に囚われず、購入する前にちょっと立ち止まることが出来るようになったならば筆者にとって望外の喜びです。