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事態は深刻です

 新型コロナウイルス感染者数が、日々上昇の一途です。なんとなく、漠然と、日本は大丈夫じゃね?とおもっている方々、甘く見てはいけません。「肺炎」という言葉に惑わされてはいけないということをお伝えしたいとおもいます。

 専門用語が多いことはご容赦ください。

 COVID-19の病態が今一つしっくりと分からないのでこの日曜日、自宅に逼塞しつつ整理してみた。まずは原因ウイルスであるSARS-CoV-2が飛沫感染するということは、感染の首座が鼻咽頭などの上気道にあると理解してよいのかどうか。最近報告されている「味覚障害、嗅覚障害」も上気道感染を示唆するか。続発する「肺炎」は、感染した鼻咽頭上皮細胞から大量に放出されたウイルスが吸引されて肺胞上皮細胞にも感染した結果起こると考えればよいのか?

 日本集中治療医学会と日本救急医学会が合同で発表している「COVID-19の臨床的特徴」を見ると、胸部CT所見は両側胸膜直下のびまん性スリガラス影を呈することが多いとある。画像検査にて何かしらの陰影があることをその定義とするならば「肺炎」でよいのか?

 初発症状出現からおよそ1週間は比較的安定した呼吸状態を呈することが多く、その後改善へ向かう症例と、急速に呼吸状態が増悪してECMO(膜型人工肺、extracorporeal membrane oxygenation)使用に至る症例に分かれる。増悪する場合には2週間目頃まで長期間にわたり症状増悪が持続することが多い。病初期には肺のみが障害され、他臓器機能は保たれている症例が多いが、進行すると多臓器不全、凝固線溶障害を来す。どうやら単純な「肺炎」ではないということがわかる。

 病態の本質はSARS-CoV-2感染により炎症性サイトカインの過剰産生が起こり、その制御機構が破綻する(サイトカインストーム)、つまり敗血症(全身性炎症反応症候群、SIRS:systemic inflammatory response syndrome)を起すことにある。その後急速に急性呼吸窮迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)を起し、多臓器不全(MODS:multiple organ dysfunction syndrome)に至るということ。つまり肺炎というより、感染性ショックによるショック肺と考えたほうがすっきりするのではないか。「肺炎」という言葉に惑わされず、あくまでもSIRS→ARDS→MODSという超急性の経過を取る極めて重篤かつ難治な全身疾患と捉えなければならないということだ。実際、「COVID-19の臨床的特徴」においては、「肺炎」ではなく、「COVID-19関連急性呼吸不全」という表現がなされている。もとより「肺炎」は特に高齢者において死亡率の高い疾患ではあるけれども、一般的には「抗菌薬の点滴で治るのでは?たいしたことないでしょ?」程度の理解であり、もう少し丁寧かつ詳しい説明がなされないと、事態の深刻さが国民に伝わらないとおもう。

 このサイトカインストームから多臓器不全を来して死に至るという経過は、1918年に全世界的な流行を来したスペイン風邪(インフルエンザH1N1亜型)とほぼ同じ。ほぼ100年が経過して医療水準が顕著に上昇している現在にあっても、既に全世界の死者が2万人を超えたことを考えると、事態は極めて深刻だ。オリンピックどころの話ではないのである。