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続・故事ことわざに学ぶ

 以前納豆が苦手な息子が、「納豆と豆腐って、逆だとおもわない?どう考えても腐った豆が納豆だよね。」と言ったことがある。確かに納豆が糸を引く様は、正に腐った豆を想起させ、こちらを豆腐と呼ぶ方がしっくりくる。ここで答えに窮したぼくは咄嗟に「腐敗」と「発酵」は違うのだよと苦し紛れの頓珍漢な答えをしたのだが、あらためて豆腐と納豆の語源を調べてみた。腐るというと悪臭を放つ変化を思い浮かべるが、別に「腐熟」という言葉があって、これは胃の中で食べ物が半ば消化された様や、堆肥などがよく発酵することを意味するようだ。つまり肉や魚などのたんぱく質が溶けてドロドロになる様を表しているわけだが、大豆がこなれて豆乳の姿になったことを腐る(実際には腐敗しているのではないのだけど)と表現したのかな。腐るという字を嫌って、「豆富」と書く場合もあるらしい。一方で納豆は湯で上げた大豆を藁の中に納めて放置した結果できた発酵食品とでも理解するのが妥当か。納豆の歴史は古く、乾燥した塩辛納豆は奈良時代から記録があり、京都の大徳寺納豆や浜名湖の浜名納豆が有名、一方で糸引き納豆は室町中期辺りから記録が観られるとのこと。

 日本語は難しく、奥が深いとつくづく感心する。諺、格言から最近の言葉まで、正確にその意味を理解して使いこなすためには努力が必要だ。元日、新年を迎えるにあたって立てた今年の目標の一つに国語の復習があるので、最近時間を見つけては四字熟語などを調べている。同時に様々な言葉の語源も知れば知るほど興味深い。以下の文章に登場する「」内の言葉、きちんと説明できますか?これから国公立大学の入学試験(二次試験)の時期を迎えます。国語の試験を作ってみましたので、ぜひ挑戦してみてください。

 問題:下の文を読んで設問に答えなさい。

 朝から晩まで新型コロナウイルスの報道で一色です。何せ目に見えないウイルスですから、余計に不安が煽られます。地下鉄車内で咳払いでもしようものなら、周囲から露骨に嫌な目が向けられ、あの人も、この人も感染しているのではないか、そのつり革が危ないなどと「疑心暗鬼を生ず」といったところでしょうか。各種イベントも次々と中止に追い込まれ、明日は我が身かと「戦々恐々」としている主催者も多いかとおもいますが、まだ新型コロナウイルスとの戦いは「戦端」が開かれた、いや「口火が切られた」ばかりです。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ですので、まずは正確な情報の入手に努めるべきでしょう。ネット上の情報は正に「玉石混淆」で、中には「眉唾物」も多数あり、俄か専門家が受け売りで「人の褌で相撲を取る」が如く解説している場面にも出会います。「コピーアンドペースト」が常套手段の彼らは往々にして「重箱の隅をつつく」ように、あるいは「針小棒大」に情報を伝え、「流言飛語」を広めることが多いので注意が必要です。人には自分の信念や魅力的な仮説を検証する際に、それらを支持する情報ばかりを集め、反証する情報は集めようとせず、あるいは意図的に無視する傾向があります。そのことを理解した上で、きちんとした「メディアリテラシー」を身に着けることが求められるのです。残念ながら新型コロナウイルスの国内流行はもはや時間の問題で、感染源を特定して濃厚接触者を隔離する水際対策は既にあまり意味を持ちません。これからは「テレワーク」、時差出勤、大規模集会の休止や休校など考えられるありとあらゆる対策を全て過不足なく行い、「敵を見て矢を矧ぐ」が如く、対策が後手に回らないよう注意が必要とおもいます。新型コロナウイルス対策において今、日本はまさにその「正念場」を迎えていると言えるでしょう。


設問1:文中、「」内の言葉についてそれぞれ簡略に説明しなさい。

設問2:「人には自分の信念や魅力的な仮説を検証する際に、それらを支持する情報ばかりを集め、反証する情報は集めようとせず、あるいは意図的に無視する傾向」のことを心理学用語で何というか答えなさい。


(設問1解答)

「疑心暗鬼を生ず」 疑い出すと、いるはずもない鬼の姿まで見てしまうように、なんでもないことまで不安になり信じられなくなること。

「戦々恐々」 よくない事が起こるのを恐れてびくびくするさま。

「戦端」 戦争のきっかけ

「口火を切る」 口火は火縄銃や爆薬、また、ガス器具などを点火させるのに用いる火のこと。また、物事の起こるきっかけや原因。口火を切るとは物事をいちばん先にし始める、あるいはきっかけを作ること。似た表現に「火蓋を切る」。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 敵と味方の実力をはっきり知ったうえで戦えば、何度戦っても敗れることはない。孫子(中国兵法の代表的古典書)にある教え。新型コロナウイルスに対しても同じことが言えます。今、全世界で彼(新型コロナウイルス)のことを鋭意調べている最中です。近日中に有効な戦法が見つかります。

「玉石混淆」 価値のあるものと価値のないものが入り混じっていること。

「眉唾物」 だまされないように用心しなければならないもの。眉に唾をぬれば、キツネやタヌキにだまされないという俗信から出たことば。

「人の褌で相撲を取る」 人のものを利用して事を行い、利益を得ること。

「コピーアンドペースト」 複製(コピー)してよそに張り付ける(ペースト)こと。転じて、そのようにして作られた定型文。2次情報。引用。

「重箱の隅をつつく」 細かいところまで取り上げてうるさく言うことのたとえ。

「針小棒大」 小さなことを大げさに言うこと。

「流言飛語」 誰が言うともなく伝わる根拠のないうわさ。デマ。

「メディアリテラシー」 メディアを介したコミュニケーションを意識的にとらえ、批判的に吟味し、自律的に展開する営み、およびそれを支える術や素養のこと。理解力。行間を読む力。

「テレワーク」 ITを利用した、場所や時間にとらわれない働き方。

「敵を見て矢を矧ぐ」 敵を目前にしてようやく矢を作ること。矢を矧ぐとは矢竹に矢羽を付けること。必要が迫ってから慌てて準備すること。手遅れのたとえ。

「正念場」 元々は歌舞伎や浄瑠璃で、主役がその役の真髄を見せる大事な場面のこと。きわめて大事な場面。最も肝心なところ。


(設問2解答) 
確証バイアス。飲んではいけない薬、予防接種の害などネットで調べるとたくさんヒットしますね。これらの情報を調べ続けていくと、エンドレスに陥ります。副作用を言い募る記事ばかりを選択し、その有効性を語るものは無視をする。新型コロナウイルスにかんしても、生物兵器説や陰謀論に結びつけた情報がネット上には溢れています。注意が必要です。