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続・桜のことあれこれ

 先日、出身教室(弘前大学病院旧第三内科)の同門会(同窓会のようなもの)に出席するために、ぼくの第二の故郷である弘前へ行ってきました。恩師、先輩や後輩と再会し旧交を温め、元気をもらい、また明日からの診療を頑張ろうと気持ちを新たにして帰ってきました。

 会の翌日、朝早起きして弘前城公園をグルっと一周ジョギングしてきましたが、外堀のソメイヨシノは既に3分咲き、陽当たりの良い場所では5分咲きの樹もありました。年々桜前線の北上は早まり、弘前城公園の満開予想日は今週末くらいでしょうか。ぼくが学生であった頃はちょうどゴールデンウィークの真ん中に満開を迎えることが多く、数多くの観光客で賑わったものです。ここ数年は4月末にソメイヨシノは早くも葉桜になることが多く、桜まつり実行委員会の面々は頭を抱えているのではないでしょうか。
 桜の花、大好きです。かつて弘前城公園にほど近いマンションに部屋を借りていたころは、毎朝ジョギングしながら蕾の状態を観察し、開花を今か、未だかと心待ちにしていたものです。いざ咲き始めれば、さあ満開は何時だ?見逃してはならんと心そわそわ。さて満開を迎えたら、今度は雨や少しの風にも、嗚呼桜が散ってしまうと心配になる。本当に桜は心を躍らせ、かき乱す花です。そんな心情を詠った名歌がありましたね。

 「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」 在原業平

 仙台ではすでにソメイヨシノは散ってしまいましたが、今度はその代りに八重桜や山桜が満開を迎えています。以前もご紹介しましたが、ソメイヨシノは人工の栽培種であり、その歴史は浅い。一方で八重桜や山桜は自然の固有種で、万葉集や古今和歌集に載っている歌に詠まれている桜はこちらの方です。確かにきれいなのですが、ソメイヨシノはちょっと白すぎて、味気ない。一方で八重桜や山桜は色が濃くて、少し大きい。どちらも甲乙つけがたいのですが、最近は八重桜、山桜の方がちょっと好きになってきました。大昔、奈良の都から京の都に贈られた八重桜を愛でた素敵な歌があります。

 「いにしへの 奈良の都の 八重櫻 けふ九重に にほひぬるかな」 伊勢大輔

 世界中で一度は訪れるべき名所の一つに、日本では「しまなみ海道」が選ばれたとか。確かに青い海に大小の島々が点在する美しい自然の風景に、こちらは人工の極致とでも言うべき巨大なつり橋が溶け合って、すばらしい景色ですね。でもぼくはやはり日本の美は山にあるとおもう。そして日本の国花とされる桜がある風景を海外のお客さんにぜひ見せたいとおもいます。これまた有名な歌がありますね。

 「敷島の 大和心を人問わば 朝日に匂ふ 山櫻花」 本居宣長

 日本人が桜の花に抱く心情はどのようなものでしょうか。ぼくがおもうにそれは、「潔く散る美しさ」ということに尽きます。短い時間に全力を尽くして咲き誇り、決して自己主張は強くなく、過剰に香らず、その時が来れば未練がましい態度は一切見せずにパッと散る。その潔さこそ日本人の誇るべき特質だとおもいます。しかるに最近の国会議員が見せる失言やら忖度をみるにつけ、どうも日本人は桜の潔さを忘れつつあるのではとおもえてなりません。今の国会議員さん達はどちらかというと、西洋の薔薇でしょうか。かの新渡戸稲造がその名著「武士道」で述べているごとく、薔薇は確かにきれいなのですが、その香りが強く、そして何よりも棘をもって、近寄る人を傷つける。そしてなかなか散らず、そのまま萎れる。桜の潔さと比べると歴然とした差があるのです。
 願わくば桜のような議員さんが今後一人でも増えんことを。