トピックス

漢字はムズカシイ

 昨日は休診日だったので朝ゆっくりと起きて朝食を美味しく頂いてから犬たちと散歩に出かけた。いつもの散歩コースの途中に内科医院があるのだが、その入り口に小さな黒板が設置してあって、種々のお知らせが書かれている。今回はインフルエンザ予防接種に関するものが書いてあったのだが、何だかおかしい。立ち止まってしげしげと眺めていたら、「インフルエンザワクチン摂取」とあって、なるほど「摂取」は違うよなと納得。ちょっと迷った末に思い切って医院へ電話をし、「もしもし、通りがかりの者ですが、黒板に書かれている漢字が間違っていますよ。」と伝えたら、「えっ!ご親切に、ありがとうございます。」と丁寧なお返事。うん、良いことをした。医療機関だもの、医療に関する用語に誤字があったら恥ずかしいよね、一日一善!と自画自賛しつつ通り過ぎたのだが、何となく胸騒ぎがして、暫くしてからもう一度医院の前に戻ってみてずっこけた。今度は「接取」となっている。たぶんこの黒板に情報を書き込んでいるのは事務員の方だな、医療専門語は難しいものね、などと独り言を言いつつもう一度電話をした。「もしもし、何度もすみません。漢字、一文字は直っていましたが、取の字がまだ違っています。のぎへんの種ですね。」事務員さん、先程よりも更にか細い声音で、「本当にありがとうございました。」と恐縮している。いや、仕方のないことだとおもう。医療専門語のみならず日本語、特に漢字は本当に難しい。同音異義語はたくさんあるし、人称代名詞に至っては「僕」「私」「俺」「わし」「あたし」「あたい」「小生」「おいどん」その他諸々あるものね。そういえば津軽弁では「わ」(わたし)と「な」(あなた)だなあ。更に驚くべきは助数詞の数で、「一個」「一冊」「一組」「一匹」「一軒」「一皿」「一斤」「一棹」など数え始めたら切がない。恐らく外国人にとっては極めて難解で、この辺りを理解して使い分けるのはまず無理ではないかとおもう。

 日本語の書き言葉は漢字仮名交じり文、つまりは表意文字である漢字と表音文字である仮名を交えて書くのが特徴で、これは実に素晴らしいシステムだとおもう。漢字が入らない文章は、極めて読みにくい。「かんじはむずかしいとかんじた。」などと書かれていたら、「漢字は難しいと感じた。」なのか「幹事は難しいと感じた。」であるのか、はたまた「監事は」あるいは名前の「寛治」「莞爾」とも取れてしまう。いやいや通常病気が「かんち」すると読む「完治」も「かんじ」と読むことがあり、そうだとすると「完治は難しいと感じた。」もありうる。いやはや漢字仮名交じり文を使いこなす我ら日本人の知的レベルは相当高いと自負して良さそうだ。

 さて「ワクチン摂取」だ。考えようによってはワクチンを体内に「摂取」するわけであるから意味は通るかしら。ポリオの生ワクチンは経口だから、この場合は文字通りワクチン「摂取」でも良いかなあ。それでは「ワクチン接取」はどうだろう。ワクチンに接して、免疫効果を取るとでも解釈すればよいのかな。ちょっと無理だな。いやはや楽しい散歩であった。
 
 10月31日追記:ここ数日、何か違うんだよなあ。何だろうと思い続け、誤字がないかどうかこのエッセイの見直しを重ねていたが、違和感の理由が不明だった。
 昨夜の夢枕に、関西弁だか何だかわからないオッサンが立ち、「おんどりゃー、いい加減なこと言うたらあかんでぇ。経口ポリオワクチンなんて、何時の時代のこと言うてるねん。」と宣った。はたと気が付き、違和感の原因がわかりました。ポリオワクチンは既に数年前から不活化ワクチンに変更されており、経口生ワクチンの時代は終わっているのでした。疑問に思った方がいらしたら、お詫び申し上げます。現在の経口ワクチンは、ロタウイルスに対するものくらいですね。