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縮小均衡を目指す指導者は何処に?

 この連休はあいにくのお天気でした。仙台はそれほどでもありませんでしたが、これから九州、四国地方はさらなる大雨に対する注意が必要です。

 ニュースで自民党が総裁の任期を現在の2期6年という縛りを取り払うべく検討を始めると知りました。一方で野党第一党の党首選挙もありました。

 日本について将来の方向性はどのようにあるべきなのか、大好きな平川克美氏の代表作3冊を読んだ感想文を書きました。

 先日乗せてもらったタクシーの運転手さんと色々なお話をした。先の小泉首相時代に断行された規制緩和で、仙台市は政令指定都市の中でも指折りのタクシー過剰都市なのだそうだ。この10年で売り上げは右肩下がりの一方で、この運転手さんのように年金を貰っていれば辛うじて暮らせるが、専業で従事している若い運転手さんは大変であろうとのお話であった。タクシー業界はこの先更に厳しい状況に陥ることは必至で、数年後にはかなりの会社が淘汰されるだろうとのことだが、実際暫く前に仙台ではHタクシーが倒産した。
景気のよい話はなかなか聞こえてこない。

 件の運転手さんは昭和27年生まれ。高校卒業後、大手の銀行に入社。当時高卒と大卒合わせて新入社員はなんと1000名だった。初任給は1万8千円、それが次の年には3万6千円と倍になった。その後暫くは倍々と増えていって、明日は今日よりきっと良い日だと確信できる時代だったようだ。この時代、東北地方を代表とする地方農家の次男坊、三男坊が集団で東京に出てきて「金の卵」と言われたのであった。多くが東京下町にひしめく中小企業に就職し、その後の高度経済成長を支える原動力となった。

 暫く前の新聞に、東京は大田区辺りの町工場が最近次々と廃業しているとの記事が載っていた。町工場といえば板金や旋盤技術に熟練した技術者が勤める中小企業で、戦後日本の経済成長を支えてきた、いわば「手仕事ニッポン」あるいは「メイド・イン・ジャパン」の象徴だ。

 日本における熟練工の技能は世界に冠たるもので、主に中小企業で活躍してきた彼らの技がメイド・イン・ジャパンの品質を担保してきた。ところが経済成長期に進行したオートメーション化と徹底した効率化は彼らの仕事を徐々に奪い始め、町工場の閉鎖が相次ぎ、技能の後継者も少なくなっていった。そして今、時代は更に変わり、3Dプリンターの出現が彼らを極限まで追い詰め始めている。かつては彼らの巧みな技をもってのみ作られていた精密な部品や器具が、これからは3Dプリンターによって安価かつ短時間で作られるようになる。人の手は不要になりつつあり、今までよりいっそう雇用が失われる事態が生まれている。

 コンピュータに代表される技術革新により利便性や効率化を求め続けた結果、多くの人から仕事を奪い、日々の生活に苦労する人を増やすことになった。一見便利になったかに見えても、額に汗して働き生活の糧を得るという人間にとって最も基本的な在り方を取り返しのつかないレベルまで毀損してしまったとすれば、忌々しき問題だと思う。残念ながら今後更にコンピュータは進歩し、人工超知能が我々の仕事を更に奪う時代が来る。ぼくはもう生きていないだろうから良いけれど、後輩たちの行く末がやっぱり心配になるのだった。
 

 それにつけても例のアベノミクスのおかげでグローバル大企業はかなり儲かったようだ。東京下町の町工場が次々と倒産する現実を見るにつけ、大企業が儲かれば下請け孫受け企業にも好循環が期待できる、おこぼれに与ることができるとするトリクルダウンは幻であったと言わざるを得まい。大企業はその内部留保を増やし、下請けは人件費の安い海外に出す。所謂グローバル企業というものには祖国への帰属意識(それを愛国心と呼んでもよいのかも知れない)が既に乏しく、大切なものは何を措いても株主の利益となった。有名企業のあの社も、この社も株主にはかなりの比率で海外資本の名が挙げられる。大企業は下請けの中小企業のことはおろか、日本国民の雇用を維持して明日への希望を持てる社会に貢献しようなどとは一顧だにしないようになってしまった。

 我々にも責任がある。郊外に次々とオープンする大型量販店へいそいそと通い、地元商店街がシャッター街に変貌していく様をただ座して眺めていた。ふと気がつけばウォルマート系列や、コストコなど米国資本の大型店へ嬉々として貢ぐ我々が居た。かくして先の大戦後、一時は経済戦争でかの米国に一矢報いる勢いであったわが国も、二度目の敗戦が濃厚なのは残念なことだ。

 今しばらく国政選挙は無い。自民党内では2期6年の党則を変えてまで安部さんの続投を模索するようだ。そろそろ右肩上がりの経済成長などという幻想を追いかけるのは止めにして、人口が減っても皆が幸せにつましく生活できるコンパクトな日本を目指す人たちに舵を取ってほしいとおもうのだが、そんな人たちはいったい何処に居るのかなあ。

(参考文献)
 1.「移行期的混乱 経済成長神話の終わり」 
                   平川克美 著 (筑摩書房)
 2.「移行期的乱世の思考 「誰も経験したことがない時 
代」をどう生きるか」  
                   平川克美 著 (PHP研究所)
 3.「小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ」
                   平川克美 著 (ミシマ社)